今の住まいは、何階?
メンタルケアの病院に向かった。
医師の口から、本人の前で、入院の話しが出た。
「入院しましょう」
「夜に眠れて、昼に起きていられるように、なりますよ」
「すぐに、家に帰れますよ」
本人に直接話したのは、初めてである。
「いやです」
「絶対、入院しません」
答えは、頑強であった。
まだまだ、しっかりしているのだ。
診察が、終わった。
隣接している薬局には向かわず、反対方向の駐車場の方に行ってしまう。
止む無く、車に乗せてから、一人で薬局に行く。
戻ると、
「すぐに、帰ろう」
と言う。
田舎の自宅には、泊まらないと言う。
今回は、特に予定はない。
急きょ、戻ることにした。
無言が続く。
恒例の、車窓から目につく文字を、ひたすら読み続ける看板読みもせず、黙っている。
入院の話しは、ショックだったようだ。
もともと、病院は嫌いな方である。
まわりに、ネオンなどが見えはじめ、都会に近づく。
「あの建物かな」
と、暗やみに見える建物を指さして、聞いてくる。
何のことか、わからない。
黙っていると、
「あの建物?」
と、再び、別の建物を指差し、聞いてくる。
「なんのこと?」
「5階建ては、どこ?」
「5階建てって、なに?」
「これから、行くところ」
「行くところって、なに?」
「泊まるところ」
「住んでいるところは、14階だよ」
「前は、14階だったけれど、今は5階」
マンションらしい建物を見つけると、同じことを繰り返している。
今は、5階建てに住んでいるという。
14階のところは、前に住んでいた所だ、ともいう。
5階とは何なのか、家に着いても、解明できなかった。
今日の初めて出た"入院"との言葉で、さらに自分の世界に閉じ込めてしまったようだ。
確かではないが、メンタルケアの隣に建っている病棟が、5、6階建てだったような気がする。
薬を取りに行っている間、車窓から、その病棟が見えていた。
あれほど、嫌がっていた入院だが、奥深く押し込まれてしまった正気だけは、覚悟したのだろうか。
胸が痛む。
明日の朝、入院しなくとも良い、と伝えてみよう。
そもそも、まだ入院させたくないから、いっしょに戻ったのだから。
こちらが想像すら出来ない世界に、一歩、さらに一歩、進めてしまったようだ。
"いつまで持つか心配"が、さらに、大きくなってしまった日であった。
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コメント
mayaさんへ
コメント、ありがとう。
フィクションだったら、とってもハッピーなんですけれど・・・
でも、一番つらいのは、本人かも。
投稿: KazuW | 2007年10月31日 (水) 21時00分
密かに、でもちゃんと読んでますよ
切ないです
けど、しっかり向き合わなくてはいけないですよね
どの文章も現実なのかフィクションなのかと一瞬
迷うほどの内容で考えてしまいます。
でも、現実なんですよね。
こそこそっと読んでいきますからね(^.^)
投稿: maya | 2007年10月30日 (火) 01時03分