ツツジは、ツツジ(3)
庭の中央には、大小さまざまな庭石が、配置されている。
高価なものは、ひとつもない、と思う。
その石に寄りそうように、ツツジが植えられている。
無機質な石と対峙するものは、ツツジだけである。
面積的には、中央の主要部分の大半を独占している。
それにもかかわらず、早春、盛夏、秋、冬期と、四季折々の大半は目立つことはない。
とても控えめな性分、なのである。
南から初夏の声が聞こえてくるころ、田舎では、梅雨の真っ盛りを迎える。
それまで控えめだったツツジが、豹変する。
主役として、躍り出るのである。
まず、紫色のツボミがふくらみ、時の訪れを告げる。
翌日から次々と、控えめに開花をはじめる。
それに呼応して、舞台が開演する。
真っ白の花びらの真ん中に、赤みのある花も咲き始める。
数日おいて、前の演技の終わるのを待つかのように、燃えるようなオレンジ色が花開く。
もはや、だれにも止められない。
待ちに待った淡いピンク、透明な紅色、濃厚なピンクの花などが、いっせいに咲き乱れる。
それらに加えて、花びらに斑紋が混じっているものも現れる。
この季節に待ち合わせたかのように、いろいろな顔ぶれがそろう。
同じ色のツツジはない。
各々が、個性を発揮する。
梅雨のシトシトと降り続く中に、ツツジは良く似合う。
雨に濡れた花びらは、子ども心にも美しかった。
どこからか湧き出たように、小さなアマガエルが合唱を始める。
アマガエルの季節でもある。
これも、ツツジに良く似合う。
昔あった向いの大きな家には、入口近くに、アジサイがいっぱい植えてあった。
梅雨には、アジサイも似会う。
大きな"手まり"のような花は、それ自身で色が七変化する。
それはそれで美しかったが、次から次へと華麗な装飾をほどこすツツジの群れには、かなわなかった気がする。
アジサイには、カタツムリが似合う。
しかし、演奏を奏でることはできない。
幼きころ、長雨がつづくと小さな棒で、カタツムリの角をつついて遊んだものである。
その隣の家にもアジサイがあり、お互いに競い合っていた。
向いの大きな家は、すでに庭も含めて取り壊されている。
昔の面影が微塵も残っていない跡地には、5、6軒の新しい家が立ち並び、見知らぬ住人と入れ替わっている。
その隣の家には、一年中、一緒に遊んでいた竹馬の友がいたが、こちらも数年前、亡くなってしまった。
両家の奥さんたちと、常日ごろ親しかった母も、今や思い出すら語ることもない。
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