梅雨に似会う花は?(2)
田舎には、アジサイにまつわる話がある。
ある庄屋の家に、アジサイの花が大好きな年頃の一人娘がいた。
許婚も決まっていて、近いうちに婿としてもらうあろうと、まわりの皆は思っていた。
ある日、北の都から一人の若者がやって来て、しばらく庄屋の家の世話になった。
出会った瞬間に娘は、一目ぼれをしてしまった。
寝ても覚めても、心に浮かぶのは、その若者のことだけである。
食事も、通らなくなった。
尋常でない様子を心配した親は、娘を問いただし、やっとのことで理由を聞きだした。
止む無く、両家の話し合いのもと、決まっていた婚約を破棄した。
許婚だった相手は、まもなく嫁をもらい、幸せな生活を始めた。
ところが、北の都から来た若者は、一存で決められず親との手紙のやり取りを続けるだけだった。
煮え切らない態度に、娘の熱が冷めてくる。
そのような時、南の都から若衆がやって来た。
娘の気持は、そちらに奪われていく。
やっとのことで、北の若者に親の許しが出た時には、娘の気持は変わってしまっていた。
連れて行こうとした若者は、失意のうちに一人で帰郷してしまう。
庄屋は、南の若衆に娘の"想い"を伝え、説得することにした。
しかし、一人息子であることを理由に、きっぱりと断られてしまう。
一人ぼっちになってみると 前に婚約していた男の幸せな家庭が羨ましくなってきた。
また、食事が通らなくなる。
今度は、庄屋の力を持ってしても、出来ない相談である。
まもなく、はやり病にかかり、あっという間に死んでしまった。
やがて娘は、好きだったアジサイに生まれ変わった。
それ以降アジサイは、女ごころの揺れ動き、移ろ気を表すかのように、"七変化"するようになった。
"焼きもち"も、猛毒に変わっていった。
家畜などや人でも、アジサイをたべると、痙攣・麻痺などを経て死亡する時もあるという。
しばらくすると、一人娘の家の入口には、アジサイが植えられるようになったという。
一輪のアジサイの花を見つからずに盗み、玄関に飾ると、災難にもあわず、お金にも不自由しないで、一年が過ごせるとも言われるようになった。
外国でのアジサイの花言葉は「元気な女性、忍耐強い愛情」なのに、日本では「移り気、あなたは美しいが冷淡」である。
娘が最も欲しかった「一家だんらん、家族の結びつき」の花言葉も、付け加えられた。
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