いつもの診療帰省
診療のための"帰省の日"がやってきた。
前回と同じ時刻であるが、明るい。
1か月の間に、確実に日の出が早くなっている。
時は休むことなく、巡っているようだ。
前回は、白々と夜が明ける中での出発であった。
今日は、霧雨のような雨が降っているにもかかわらず、明るい。
エレベーターの中で、
「まだ入院させないから、心配しなくても良いよ」
と伝えておいた。
前回、
"病院へ行く"イコール"入院させられる"
と勘違いしたようで、診療が終わるまで落ち込んでいたからである。
一転して、ルンルン気分で車に乗り込む。
すでに、診療のことは忘れ、心は"ドライブの日"に変わっている。
自動車道に入るころ、霧雨から小雨に変わった。
走っている車は、不思議なほど少ない。
先週は、ゴールデンウイークであった。
今週は、"お父さんたち"の骨休みの日のためなのか、悪評高いガソリン税値上げによる節約のためなのか、とにかくガラガラである。
いつもの、行楽に向かう乗用車は姿を消し、トラックだけが、やけに目につく。
隣では、"カーナビ麗人"との会話が、続いている。
カーナビが発する合成音を、実在している女性だと信じて疑っていない。
「まもなく、左手から、車が合流します。ご注意ください」
「左、左」 ~ ~ 「左、左」
「5キロ先を、直進方向です」
「直進、直進」 ~ ~ 「直進、直進」
「まもなく、パーキングからの合流があります」
「合流、合流」 ~ ~ 「合流、合流」
・・・・・・・ ~ ~ ・・・・・・・。
自動車道なので、カーナビの案内は少ない。
時折りの"カーナビ麗人"からのお知らせがあると、待っていたかのような対応を、2、3分続けている。
限られた会話を、長く楽しむ方法を見つけたようだ。
若く、気立ても良い娘であると、今でも確信している。
楽しそうである。
それらの会話の間に、看板の字を読む作業が加わる。
結構、忙しそうだ。
時たま、花が咲いている。
「サクラが、満開だねー」
「あのサクラは、きれいだねー」
樹木に、白からピンク系の花が咲いていれば、この季節はすべてサクラで片付けられる。
何気なく聞いていたが、面白いことに気づいた。
人里に咲く大きな樹木の花は、ほとんどが淡紅色だ。
この歳になっても、まだまだ親から教えられることがあるようだ。
遠くに見える田舎の方角の空が、明るくなっている。
いつしか小雨もやみ、曇りに変わる。
その曇りも、徐々に、明るい曇りに変わる。
遠くは多少ぼんやりしているが、見晴らしは悪くない。
今回も、順調過ぎるほど早く田舎に近づいている。
ちょっと一般道のドライブも楽しむことにした。
2点を除いて、心地よいドライブが続いた。
途中で、3回のオムツを替えなければならなかった。
もう一点は、生まれ育った古里の湖を見て、
「大きな湖だね」
「こんな大きな湖は、はじめて見た」
と、言い出したのである。
しばらくして、表示板が出てきて、思い出したのが救いである。
季節が止まることなく進むように、こちらの夢の世界への引っ越しも、着実に進めているようだ。
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