夢の世界に電話が鳴る(3)
目覚まし時計の音で、我に返る。
爽やかとはいえない朝を迎えた。
天候は晴れ、遠くに富士山もくっきり見える。
寝不足だけでなく、すっきりしない。
起きてくると、同じことを言う。
「亡くなった」
忘れるでもなく、揺れ動くことなく、断言する。
やはり、いつもと違う。
なぜ分かったのかを、再び聞いてみる。
「見たもの」
「変な顔をしていたから、ダメだったんだね」
「お姉さんの顔は、変な顔になっていた」
・・・・・・・・・・・・・
久しぶりに見舞いに行った時の衝撃が、今の状態でも消え去ることがないほど、深く刻まれてしまったようだ。
その姿が、夢にでも"再放送"されたのだろう。
"事が事"だけに、確認はしたい。
しかし、用もなしに電話をする習慣はない。
容体が急変したからとの連絡があったため、久しぶりに見舞いにも行っている。
容体の確認も、"何かを期待"したかのようで、変である。
新年を迎えた正月でもある。
まして、
「母が言っているので、亡くなったのですか」
などとも聞けまい。
そうこうしているうちに、電話が鳴る。
早朝の電話である。
親戚以外からとは思えない。
母が電話に出ることなど、数年前からしなくなっている。
緊張して、受話器を取る。
受話器から明るい声が伝わってくる。
母の末妹からだ。
おくればせの新年の挨拶であった。
思いがけないチャンス到来である。
型どおりの挨拶をしたのち、それとなく聞いてみる。
容体は回復して、落ち着いているとのことだ。
問題はなかろうと考えてはいたが、胸のつかえが下りた。
不安も、すっきりと消え去った。
部屋には、すがすがしい陽の光が、いっぱい注いでいた。


コメント