住めば都(2)
トランクから、飲料水の入ったペットボトルと枕を取り出す。
いつでも避難できるように、車には飲料水や軽食など、非常食が常備されている。
車に、乗り込む。
駐車場はビルの谷間にあるため、テレビ映像は波打ったようにモザイク模様になってしまい、番組を楽しむことはできない。
ラジオに切り替える。
他愛のない深夜番組のトークが流れてくる。
少し喉を潤し、シートを倒す。
住まいの建物の通路に、ややオレンジ色がかった灯りが、規則正しく点灯している。
誰かが言ったようにも、確かに"蜂の巣"のようだ。
可笑しさも湧いてくるが、蜂の巣の一個一個に、その数の分の様々なドラマがあるはずだ。
夫婦で杯を傾けながら語り合っていたり、若いカップルが次の休日の楽しみを打ち合わせていたり、レンタルビデオで好きな映画を楽しんでいたり、新学期にも慣れはじめた小学生が明日の夢を見ていたり、各様を楽しんでいることだろう。
ビルに囲まれて、空を見なくなって久しいが、路上生活では空が見える。
街の明かりで空も明るく、星などはなかなか見つけられない。
月も見えない。
昨日のニュースで、新月だと言っていた。
お月さまと、会えない日だった。
先週と違って、北から寒気が入っていようで、多少の肌寒さは感じるものの、真冬の寒さとは違う。
冬は、エンジンを切ると、瞬く間に冷える。
外にいる以上に、寒さを感じる日々もあった。
夏は、瞬く間に、蒸れる。
金属に覆われているから、その時の環境が増幅されるようだ。
翌日は、確実に身体のあちこちが痛む。
若い時には、車を持っている友達を中心に、よく旅行に出かけたものである。
金の無い時代である。
連日の車中泊も、珍しくない。
でも、身体が痛いなど感じたことはなかった。
むしろ、冒険をしているようで、わくわくしていた。
年を感じる。
ウトウトしていると、夢を見る。
戸が叩かれている夢だ。
夢の中でも、"同じ出来事"を体験するのかと苦笑いする。
ぼんやりと、意識が戻り始める。
いや、何かが変だ。
現実に、ドアを叩く音がする。
暗闇の中で、誰かが叩いている。
母だ。
夜明け前の薄暗い中に、手提げカバンを持ち、パジャマの上に上着を羽織って、ドアを叩いている。
何かを、言っている。
フロントドアのガラスを下ろす。
「"老人会"に、行くよ」


コメント
ekoさん
温かいコメントありがとうございます。
ekoさんの方が大変なようですので、ご自愛ください。
メールアドレスが分かりませんので、まずは御礼申し上げます。
投稿: KazuW | 2009年4月28日 (火) 20時05分
トラックバックありがとうございました。
私は ジジの暴言と刃物をもったおどろおどろしい睨みが怖くて 数年前から 過呼吸持ちになってしまいました。電車の中で気を失い 救急搬送されたこともあります。このほか三叉神経痛、ひどいジンマシン、片耳 低音域が全く聞こえなくなる突発性難聴 などなど 健康が取り柄だった私が次々こんな事になる有様。全て各診療科にて 寝不足と過労だと言われました。なので身を守る為に さめさめ〜嫁化することにしました。でないとこっちがつぶれます。どうかケアマネージャーさんと相談し ゆっくり眠れる日を月いちでも作ってください。どうぞどうぞ「ご自愛」ください。。。
投稿: eko | 2009年4月27日 (月) 21時40分