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居間に浮島ができた

 
 飽きることなく、朝がやってきた。
 夜明けごろから、居間の方から騒々しい音がしていた。
 ドアを開ける。
 一歩踏み出た途端、見えるはずのない姿が、なぜか見える。
 台所近くに、座っている。
 コタツ兼テーブルも、いっしょに移動している。

 台所と居間は、L字の形でつながっており、バリアフリーにしたから、ドアや段差などの境界となる障害物はない。
 L字の角を境界とすれば、明らかに台所への領土侵犯である。

 不思議な光景を理解できないまま、数歩進む。
 テレビの姿が、見えた。
 通電はされておらず、画面に映像はない。
 後ろ姿しか見えないが、夢の世界を透視しているのか、微動だにせず、前を見据えている。
 食事の時のエプロンも、しっかりと掛けている。

「おはよう」
「お帰り」
 半年前からか1年前からかは忘れたが、いっしょにいない時は、"外出している"と疑うことなく、確信している。
 説明しても理解できないし、面倒なので、今ではそのままに聞き流している。
 ずいぶん前から、座いすに座ると、座った位置に合うようにテーブルを手前に引いてしまう。
 座いすを、テーブルの位置に合わせるなどしない。
 席を立つたびに座イスは引かれるから、回数分だけ後退する。
 何回か繰り返されると、居間の壁や戸に当たる。
 これ以上は、後退することはない。

 気付くと直すが、また繰り返される。
 それでも、後ろ方向への後退だけだった。
 1メートル程度の後退は日常茶飯事なのだが、新たに左右へと、横の移動が加わったようだ。
 どのようにして横に移動したのだろうか、不思議である。
 いくら考えても、答えらしきものは、思い浮かばない。
 今まで、横へ移動した記憶はない。

 元の位置に戻す。
 きっと、新たな動きが発明されたようだ。
 食事を作っている最中は、移動しなかった。
 後片付けの間にも、それらしき動きはなかった。

 難問の解答を見つける楽しみが、また1つ新たに増えた。
 
 


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