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大好き"だった"海に向かう

 
 昨夜までの雨が上がったようで、陽射しが差し込んでいる。
 まだ梅雨に入っていないが、雨の日は続いていた。
 空を見上げると、スッキリとした青空である。
 久しぶりの青空は、気持ち良い。
 朝食も終え、洗濯も終えた。
 本日は、人と会うなどの予定もない。

 老人会に行けないと分かると、すぐに寝てしまうようになったため、ドライブには、ずいぶん行っていない。
 "日曜日はドライブの日"、が消えて久しい。

 誘ってみた。
「行く?」
 最近、ドライブに行っていないからか、少しの間があって、返事が返ってきた。
 決まった。

 着替えるように促す。
 こちらも、着替えに入る。
「着替えが終わったよ」
と声がする。
 いやに早い着替えである。
 居間に戻ると、パジャマの上に上着を引っかけ、股引に履き替えた姿で待っていた。
 デイサービスに行く時の、手提げ袋もさげている。
 "なぜ老人会に行けないのか"のタダをこねないものの、相変わらず、デイサービスが頭の中を支配しているようだ。

 着替え直しをさせ、準備はできた。
 紙おむつも、持った。
 いつもの、行く前のセレモニーに入る。
「どこに行く?」
「どこでもいい」
「海、山?」
「どこでもいい」
 必ず海を選んでいたはずなのだが、前回から返事が変わった。

 車に乗り込む。
「海、山、どちらに行きたい?」
「海がいい」
 待っていた返事が返ってきた。
 決めてはいたが、いつもの海岸に向かことが了承された。
 60キロほどの距離を、自動車道で結ばれているから、1時間ちょいで着く。
 久しぶりの"ドライブの日"の始まりである。
 
 ラジオから、天気予報が流れる。
 昨日と打って変わり気温が上昇し、真夏日近くになるという。
 なるほど、青空だけでなく、入道雲らしき雲も湧き出ている。
 まるで、真夏のようである。

 助手席は、いつもの雰囲気ではない。
 自動車道に入ったとしても、都会の中だから、看板はいたるところに見かけ、読み上げる文字には事欠かない。
 "カーナビ麗人"と、会話を交わしてもいない。
 静かなのである。
 寝ているのでもなく、前方を見据えている。

 理由は、なんとなく分かる。
  ◇ "老人会"に向かうルートではない。
  ◇ なぜ、連れて行ってくれないのだろう。
 デイサービスに話題を振ってみた。
「昨日の老人会では、何をしたの?」
 予想通りだった。
「花を作った。いっぱい作った」
「歌を歌った。楽しかった」
「ゲームをした。おもしろかった」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 昨日の出来事だけでなく、節分の豆まきの様子や、お雛様まで含んだ説明が始まった。
 助手席は、いっきに騒がしくなった。

 いつものシーンとは違うが、これでいいのだ。
 
 


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