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七夕がやってくる(2)

 
 次の日の朝、瑞々しかった笹竹は、枯れ姿に変わっていた。
 青々として、4人の職員たちを翻弄していた面影はない。
 昨夜の抵抗に疲れたのか、それとも悟ったのか、静かな姿に変わっていた。

 七夕に関するものは、会話に出なかった。
 塗り絵をやったのだの、踊りをやったのだの、ボーリングをやったのだの、ごちゃまぜな会話の中にも、間違いなく出ていない。
 笹竹を設置したのが昨夜だったたから、七夕の準備はこれから始まるのだろうと考え、あえて質問もしなかった。


 迎えに訪れると、真白な短冊が10数個ぶら下がっている。
 いよいよ、七夕が始まったようである。
 枯れた笹竹に、白い短冊だけがぶら下がっている。
 ふと、昨年も同じ様なスタートであった気がする。
 白だけでは、彩りに欠ける。
 やはり、七夕は、華々しい方がいいと思う。

「今日のお昼は、・・・・・」
「おやつに、・・・・・」
「・・・・・をやった。楽しかった」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 

 いつもの、パターンが始まった。
 しかし、七夕の話しは出てこない。

「今日は、みんなで習字をやったよ」
 これだと思った。

「七夕様に、何をお願いしたの」
「してないよ」
「入口に、笹が飾ってあったよ」
「していないよ」
「短冊がぶら下がっていたよ」
「作っていないよ」
 話しの様子からは七夕の雰囲気が感じられず、どうも本当の"習字"をしたようだ。
 とすれば、ぶら下がっていた短冊は何なのだろう。

 介護センターは、バリアフリーになっているので、靴を履いたまま入っていける雰囲気があるのだが、土足厳禁になっている。
 どこからが境界なのか、いまだに知らない。
 入口には、多数のスリッパが供え付けてある。
 履き替えてまで、短冊を見るのも"変かな"と遠慮した。
 まさか、給料を上げてほしいとか、勤務時間を短くしてほしいなどと、職員が書いてあるわけもなかろう。
 急に、"誰が、何を"書いたのか、興味が膨らんだ。
 次回、ちょっと覗き見してみよう。

 今日は、きっぱりと返事をしていた。
 時系列に混ぜこぜになっているものの、まだ記憶の部分は大丈夫だと、一安心した。
 梅雨の晴れ間のような日だった。
 
 


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