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七夕がやってくる(3)

 
 介護センターの、自動ドアが開く。
 笹竹は、ずいぶんと賑やかになっていた。
 短冊は白い色のままだが、ずいぶん数が増えている。
 4本ほどの"輪っか綴り"も、加えられた。
 七夕は、こうでなくてはならない。
 赤、黄、青、ピンクなどが輪になり、笹竹と天井を結んでいる。
 いよいよ、七夕のイベントの始まりである。

 まだ、枯れた笹竹を着飾るには、白い短冊の方が多すぎて、華やかさには欠けている。
 一番星、二番星も、網飾りも、吹き流しも、投網もない。
 都会では、田舎のような"決まり"はないようだ。
 この介護施設には、大勢の人が集う。
 日にちを重ねるごとに、にぎやかになることだろう。

 まもなく、職員に連れられて出てきた。
「さようなら」
「お世話になりました」
「元気でね」
「またね」
・・・・・・・・

 一人ひとりに挨拶をしながら、元気に出てきた。

 車に乗り込むと同時に、おしゃべりが始まる。
「今日のお昼は、・・・・・」
「おやつに、・・・・・」
「・・・・・をやった。楽しかった」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 

 
、遂に、話しに出てきた。
「今日、七夕を作ったよ」
 今日から、話しの内容が"七夕"に代わった。
 短冊を作った、短冊に字を書いたと、くり返し言っている。

「何をお願いしたの」
「何だったんだろうかねー」
 元気なものである。
 関連の行事は、数日間は続けられる。
 週に1回しか来ない人もいるので、大体、1週間は続く。
 しばらくの間は、七夕の話しが繰り返され、話題には困ることはなさそうだ。

 七夕ということは、7月。
 今年も、半年が過ぎたことになる。
 早いものだ。
 年を重ねたせいか、以前の"あと半分しかない"という気持ちから、"あと半分もある"と考えるようになった。
 どう考えるかは考えようだが、"あと半分もある"と考える方が、幸せな気持ちになれる。
 これも、不思議な疑問のうちの1つである。

 ふと、思い出す。
 あのアジサイは、どうなったのだろう。
 いま七夕が飾られている同じ場所の天井には、ちょっと前に"アジサイ"が吊るされていた。
 あまりにも、短命だった。
 
 


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