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夢の世界に地震が起こった

 
 声をかける。
 動きを察知するまで、繰り返す。
 まず、おむつを交換させる。
 近ごろは、おむつの交換から、1日が始まるようになった。
 初診でアルツハイマーと診断され、介護3と認定されたが、知り合いのところと比較すると、進行は穏やかである。
 時おり、症状が進んでいることに気付き、驚くことはある。
 ゆっくりではあるが、着実に進んでいるのも認める。
 現実をひしひしと感じ、将来の不安も持つようになっている。

 テレビから、外国でマグネチュード7.8の大きな地震が起きたとテロップが流れる。
 日本への津波の心配はないという。
 まもなく、地震大国のメンツにかけたのか、今度は国内で、震度3の地震が起きたとアナウンサーが告げている。
 近い場所のようであるが、揺れは感じなかった。

 食事の準備ができた。
 食事が始まった。
 しばらくすると、
「地震が長いね」
という。
 先ほどのテレビの影響だと思い、聞き流す。
 テレビで見たことを、現実のように話すことがある。
 いつものことと、気にもしなかった。

「揺れが長いねー」
 また同じことを言う。
「揺れていないよ」
「揺れているよ」
「ほら、揺れているじゃない」

「天井が揺れている」
 単なるテレビの影響でもなさそうだ。
 顔色は悪くない。
 食欲は、いつもと変わらず、暑さにもめげず、旺盛である。

 食事が終わった。
 何かをさせた方が良いとの忠告で、食べ終わった食器を、数メートル離れた"流し"に持っていくことにしている。
 立ち上がると、よろよろしている。
「まだ揺れている」
「天井が、ぐるぐる回っている」

と、症状は続いているようだ。

 "脳梗塞"、"脳溢血"の単語が、頭に浮かんでくる。
 左右のどちらか半身の力が抜け、箸などを落としてしまう。
 これはなかった。
 片目ずつ隠して調べてみたが、両目とも見えるという。、
 手足のしびれも、ないという。
 ろれつも、回っていない。
 めまいほどではないが、ふらつきはあるようだ。
 先週の定期診療では、血圧も問題ないといっていた。

 昨夜は、暑かった。
 夜の活動も活発ではなかったようで、睡眠は妨害されなかった。
 ひよっとしたら、熱中症か。
 お年寄は、家の中にいても、なるという。
 夜中に、水を補給したかどうかは分からない。
 足がつったともいっていないし、吐き気、顔面蒼白でもない。
 本人は、いたって元気である。

 食器の足片付けをする。
 食後のデザートの時間だ。
 地震は続いているというが、旺盛な食欲は変わっていない。

「今日は老人会を休んで、寝ていたら?」
「いや大丈夫」
「行く」

 きっぱりと、言い放った。


 少し心配していたが、いつもの元気な姿で、デイサービスから帰って来た。
 
 


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