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同じ棟に同じ仲間がいた(2)

 
 老いた女の人が、介護センターの職員に連れられて、エレベーターホールの入口の前までやってきた。
 職員との間の会話は、まったく成立していない。
 会話に飽きたから、黙っている様子でもない。
 職員が話しかけても、まったく反応していないのだ。
 認知症が、ずいぶん進んでいる様子が、うかがえる。

 職員が見ている方向に、目をやる。
 白髪の年老いた男の人が、1人待っていた。
 いることに気付かなかったが、こちらの人は、たまに見かける。
 80歳は優に超えていると、見受けられる。
 時折、公園を、一歩一歩確かめながら散歩していた。

 職員は、ひと言ふた言、話すと、帰って行く。
 入口の自動ドアが開き、2人で手を取り合いながら入ってくる。
 介助しているのだが、なんとなく微笑ましい、
 先ほどから、迎えを待っていて、様子を眺めていたようだ。
 同じデイサービスだと分かったらしく、話しかけてくる。
 形通りの挨拶をする。
 何階に住んでいるのか、名前は何、デイサービスは週に何回だの、矢継ぎ早に聞いてくる。
 話し相手が見つかって、鬱積を吐露しているようにも思える。

 エレベーターが、やってくる。
 ドアが開く。
 乗り込んでも、話しを止めようとしない。
 話し相手に餓えている聞き方だったので、出来るだけ応えてやろうと返事をした。
 女の人は、母より1歳若いとのことだから、相方の男性は、さらに2、3歳ほど年上だと思われる。
 頭だけはしっかりしているが、歩き方はおぼつかない。
 こちらの人にも、介護が必要な状態だ。

 10階に住んでいるという。
 ここに住むのが、5年目だそうだ。
 年老いたため、引っ越してきたという。
 玄関の鍵を掛ければ済む。
 1戸建てのように、前の道路を掃除する必要もない。
 玄関前の通路でさえ、管理する人がちゃんとやってくれる。
 強いて言えば、ベランダの掃除くらいであろう。
 ゴミ出しも、各階にはダストシュートが付いていて、ほんのちょっと歩けば、いつ何時でも捨てられる、
 目の前には公園もあるし、スーパーも公園内にある。
 年老いた夫婦だけなら、1戸建てより生活環境は良いだろう。
 近所付き合いが希薄な点だけが、難点である。

 お子さんは、との問いに、遠くにいるという。
 なぜか、悲しそうな顔をする。
 人それぞれの人生がある。
 それ以上、追及しなかった、

 10階に着いた。
 ドアが開く。
 別れの挨拶をする。
 2人が出るのに、ずいぶん時間がかかった。
 "老々介護"なる言葉をよく耳にするが、聞いている状態より、もっと大変な人を目のあたりに見て愕然とする。
 可哀想にもなってきたが、奥さんは幸せか。

 手伝いもしてあげたいが、こちらも同じ身の上である。
 ままならない。
 ドアが閉まり、さらに上昇する。
 暇ができたら、話し相手に訪ねてみよう。
 田舎の銘菓でも、手土産にもって。
 
 


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