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同じ棟に同じ仲間がいた

 
 迎えの時を知らせる調べが鳴る。
 土曜日は、デイサービスの車で、送り届けてもらっている。

 介護センターは、4、5百メートルしか離れていないのだが、送迎者の最後に降ろしてもらうように頼んである。
 最初の頃、真夜中に向かおうとして、家から出てしまう。
 方向感覚など失っているから、行き着くことはない。
 とんでもない所で、警察に保護される。
 そんなことが繰り返されたから、"老人会"は遠いのだ、と思わせるために、送迎の際は遠回りすることにした。
 送ってもらう際にも、同じようにしてもらっている。
 その効あって、徘徊は激減した。

 外出着を羽織り サンダルを突っ掛け、家を出る。
 先月は雨が多かったが、8月に入り中ごろになると、夏らしく、太陽がまぶしい日が続いている。
 今日も、平年並みとは言うものの、暑い。
 田舎と違って、周りはコンクリートだらけ、焼け石に囲まれているようなものである。
 暑さに嫌気をさしたのか、セミの鳴き声も聞こえない。
 そんな中でも、子どもたちは元気に公園内を走り回っている。
 まだ、夏休みの最中だったのだ。

 約束の時刻ちょっと前に、待ち合う場所に着く。
 1、2分遅れだけと、なかなか正確な時刻に、やって来た。
 毎日100人ほどを介護している大きな介護センターであるから、小型バスより大きく、普通のバスに近い大きさがある。
 少なくとも、2台は見ているが、何台あるのか分からない。

 送迎車が停まる。
 こちらを見つけたようで、係員がシートベルトを外した途端に立ち上がり、降車しようとしている。
 係員の静止など、お構いなしだ。
 大慌てで、2段ほどの段差を駆けおり、出ようとする。
 係員は苦笑いをするものの、笑顔は絶やさない。
 さすが、人を取り扱っている専門家である。
 上手に操り、無事に降車させる。
 その見事さには感心するだけでなく、敬服の念がわいてくる。

 お礼の挨拶をすませ、ゆっくりエレベーターに向かう。
 同じ車から、もう1人の老いた女の人が降りて来て、職員に助けられながら、こちらの後をゆっくりと追ってくる。
 いくつもの棟があるので、いずれかの棟に住んでいるのだろう。
 エレベーターホールに、着く。
 運悪く、全てのエレベーターが動いており、待機しているエレベーターはなかった。
 ボタンを押す。
 やってくるのを、しばし待つ。

 先ほどの人が、介護センターの人に連れられて、こちらに向かってやってくる。
 同じ棟に住んでいるようだが、見かけた記憶はない。
 近くにいくつかの介護施設があるので、同じ施設に通っている人が、同じ棟にいるとは思わなかった。
 住んでいる棟も、日本の人口の構成と同じように、高齢者が増えているようだ。
 
 


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