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曇り空でも、気分は晴れ(2)

 
 相変わらず心の通わないメンタルケアの医師と別れを告げ、昔からの主治医に向かう。
 別に、言い争っているのではない。
 肌が合わない気持ちが、払拭できていないだけなのである。
 表面上は、大人同士の対応をしているから、他人は気付いていないだろうし、担当を変えようとも思っていない。

 主治医の医院に着く。
 ここは、玄関口でスリッパに履き替える。
 並んでいる靴の数で、待っている患者の数がわかる。
 昔からなのだが、履き替えることそのものや、段差のある点が、認知症患者にはつらい。
  
 履き物の数だけ、患者が待合室にいた。
 あちこちで、思い思いの会話をしている。
 受け付けに、声をかける。
 見覚えのある看護師が笑みを浮かべ、
「○○さんが、見えました」
と、奥の方に向かって声をかける。
 返す刀で、
「△△さんの前に、○○さんの血圧を測って」
と、若い看護師に指示する。

 知り合いだから、診察を優先したのではない。
 ここは、受付けの窓口に、綴じられた半紙が置いてある。
 やってきた患者は、自分の名前を書く。
 ファミリーレストランと、同じやり方である。
 今日は、メンタルケアに行く前に立ち寄って、書いておいた。
 早出の看護師もいたから、その旨も伝えておいた。
 だから、割り込むような形で、順を入れてくれたのである。

 脇にいるはずの、母がいない。
 他の患者にはお構いなしに、診察室に向かって歩いている。
 すれ違う看護師たちも、さっと脇に寄り、道を譲る。
 まるで、お局様のようである。
 こちらが、待っている人に誤解されまいか、と悩む小心者とは、段違いの態度である。

 診察に入ると、すかさず
「おばあちゃんは、お元気?」
「大先生も、お元気?」
「お孫さんは、大きくなった?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 矢継ぎ早に、質問している。
 質問の内容を別にすれば、どちらが患者かわからない。

 医師は苦笑いしながら、
「昔の記憶が、出て来るものです」
「直近の記憶だけが、保持できない病ですから」
と苦笑いしながら、こちらに向かって話題を振る。

 "晴れの気持ち"は、続いていた。
 
 


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