« 曇り空でも、気分は晴れ(2) | トップページ | ミョウガの季節を迎えた »

曇り空でも気分は晴れ(3)

 
 ほどほどの時間で、診察が終わる。
 長々と別れの挨拶をして、待合室に向かう。

 メンタルケアの病院では、薬の処方箋が出て、好きな薬局で受け取るが、ここは昔ながらのやり方が続いている。
 薬が出るのを待つ。
 朝早くに名前を書いたからといって、薬の方は、早く出るわけではない。
 じっと順番を待つ。

 5、6人ほどの看護師や職員たちが、忙しく駆け回っているが、所詮は狭い空間、いろいろな会話を交えている。
 支障のない会話が、終わることなく行き来する。
 我が家のような雰囲気がして、心が和む。

 今日は、だれも声を掛けてこない。
 知り合いは、いないようだ。
 患者同士は、顔見知りが多いようで、あちらこちらでグループを作り、お互いの病気を語り合っている。
 嘆いている様子はない。
 むしろ、病を自慢し合っているようにも聞こえる。

 会話の内容が、聞くとは無しに耳に入る。
 お互いの情報を交換している。
 家族のこと、農作物の出来のこと、共通している知人のこと、飽きもせず会話を楽しんでいる。
 どこそこの子どもが就職したとか、結婚したとか、旅行の土産を貰ったとか、話題には事欠かない。
 孫の話しになると、声も軽やかになる。

 最年長の人との会話が耳に入る。
「おじいちゃんは、何歳になったの?」
「アハハ、95になった」
「お元気ですね」
「アハハ、元気元気」
 病院に通っていて、"元気"もないものだ。
 取り留めのない会話が続く。

「元気の秘訣は?」
「いつもニコニコしていることだよ」
 良い話である。
 ゆっくりめの話しぶりも含めて、心を打つ。
 親類や知人などの顔を、思い浮かべる。
 確かに、元気な人はニコニコしている。
 元気だからニコニコできるのとは、違うように感じた。
 ニコニコ顔に、"元気"が宿りつくのだと確信した。

 母の顔を見た。
 ニコニコしている。
 まだまだ、"晴れの日"が続いていた。
 
 


« 曇り空でも、気分は晴れ(2) | トップページ | ミョウガの季節を迎えた »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/218054/46229414

この記事へのトラックバック一覧です: 曇り空でも気分は晴れ(3):

« 曇り空でも、気分は晴れ(2) | トップページ | ミョウガの季節を迎えた »