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曇り空でも、気分は晴れ

 
 都会の高速道路を抜け、田舎に通じる自動車道に入る。
 定期診療のための帰省である。
 出発は、いつも同じ時刻と決めている。
 早出をしているから、大型連休などを除いて、渋滞に巻き込まれることは、ほとんど無い。
 土日が1千円になってから、順調に流れていても、車の数は格段に多くなった。

 しらじらと夜が明ける。
 前回の帰省の時は、出発の時に明るかった。
 同じ行動をしていると、こちらの都合とはお構いなしに、寸分たがわず時が進んでいると実感できる。
 9月も中旬である。
 もうすぐ、本格的な秋を迎えるのだ。

「良い天気だねー」
 助手席から、歓呼の声があがる。
 夜が明けて明るくなってはいるものの、曇り空である。
 青空は、どこにも見当たらない。
「素晴らしい天気だねー」
「気持良いねー」

 こちらに向かって言っているのでもなく、声を出し続けている。

 ドライブの日が、途絶えて久しい。
 ディサービスへの行き来は車に乗るものの、途中の道路沿いには高い建物が立ち並び、空は建物の隙間から望めるだけである。
 向かうときは、これからの楽しみに胸いっぱいであろうし、帰りは楽しかったことで頭がいっぱいになっているだろうから、空を見る余裕などないだろう。
 車から降りて、住まいのエレベーターまで歩く時も、背中が丸くなってしまっているので、上空の空とは無縁になっている。
 空をじっくり眺めるのは、前回の帰省の時以来だ。

 高層の建物の合間を縫っていた高速道路を過ぎ、自動車道に入ってから、ずいぶん経つ。
 周りには、視界を遮る建物などない。
 正面には、日常おさらばしている空が、一面に広がっている。
 明るければ、天気が良いと思うのも無理ないか、と解釈する。
 青空が記憶から消えたから、曇り空でも明るければ天気が良いと決めたのだ。
「良い天気だね」
 久しぶりの空に、お愛そうを言っているにも見える。
 今日の気分は、間違いなく"晴れ"のようだ。

 田舎に到着した。
 インターをおり、市街地を避け、大周りをする。
 両側に田んぼが、現れる。
 やはり、期待を裏切らなかった。
 前回の真っ青な風景から、黄金色の世界に様変わりしていた。
「あらら、すごい」
「黄色になっている」
「きれいだねー」
 稲穂が、歓迎するのかのように頭を垂れ、"晴れの気分"をさらに高揚してくれた。
 
 


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