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夢の中は美しく楽しい?

 
 紅葉と再会したかったのだが、雨模様では期待は出来まい。
 着替えに手間取り、出発も30分ほど遅れた。
 まっしぐらに田舎に向かって、自動車道をひた走る。
 混むこともなく、順調に到着できそうだ。
 雨はあがっていたが、田舎のインター手前5キロほどの掲示板に、"キリ注意"の文字が光っている。
 間もなく、霧の中に突入する。
 ライトを点ける。
 光の当たる空間だけが、ぼんやりと綿の塊のように白く照る。
 1分も経たないうちに、霧は一気に消え去り、田舎が現れた。
 もうちょい下れば、出口だ。

 メンタルケアの診察も終わった。
 内科の診察も終わった。
 今回、訪れる順番である叔母への顔出しも終わった。
 当面の予定は、すべて終わった。
 この叔母の住まいは、日本でも有数の湖の近くにある。
 回り道をして、湖畔に車を止める。
 岸近くの湖面は、数え切れないほどのカモで埋め尽くされているが、白鳥の姿は見えない。
 まだ飛来していないようだ。
 しばし休憩をする。

 介護の判定書が送付された中に、主治医に渡すようにとの書類が1枚同封されていた。
 メンタルケアの医師へだろうが、コピーを取り、内科の医師にも渡した。
 内科の主治医が絶句し、
「残念ですね」
「要介護5に、なってしまいましたか」
は納得するものの、メンタルケアの医師が判定書を渡した時に、動揺するのはやめてほしかった。
 専門医だし、判定前に症状の確認の電話があったはずだ。
 その時に、"要介護5"との意見を述べなければ、2階級も特進するはずもなかろうと思っていたのだが、どうも違うようだ。
 叔母は、がっくりと肩を落とした。
 妹とは分らなかったようだし、その相方も誰だか分らないのは、織り込み済みである。
 2階級も上がったのは、ショックだったようだ。

 一緒にいると、少しずつの変化には気付かない。
 診療のための帰省は、間隔が空いている。
 田舎に着くまでの間に、変化を感じ取る事がある。
 今回の大きな違いは、あれほど大好きだったドライブにも、興味が薄れた点である。
「きれいだねー」
「花が咲いている」
「雲がいっぱい」
「車がいっぱい走っている」
「信号が赤になった」
・・・・・・・・・・・・・・・・・
などと声を出したり、"カーナビ麗人"と会話をしたり、見かける看板などの文字をひたすら読み上げたり、場面に合わせて楽しんでいた。
 今回は、田舎に向かう途中から、目をつむっていた。
 叔母の所に向かう途中でも、寝ていた。
 睡眠が不足していて、眠いのではなさそうなのだ。
 目の前の湖面に戯れるカモの群れにも、すぐに飽きたようで、目をつむっている。

 お菓子を取りだし、封を破る。
 その音を聞きつけ、目を開ける。
 すぐさま、食べ始める。
「美味しいね」

 どんよりと曇った空の一部が薄れ、陽の光が射す。
 真っ白から、無限に色づくグレー、そして黒が織りなす墨絵から、オレンジ色から深紅を取り交ぜた輝く光が降り注ぐ。
 空も負けじと、青だけでなく、くれない色に光りだす。
 木々や花も美しいが、田舎にはびっくりするほど、自然の美しさを見せる時がある。
 湖面にも反射し、雲と空が織りなす美しさは見事である。
 お菓子を食べ終わると、またウトウトし出した。
 自然の美しさにも、感動の言葉はなかった。

 夢の世界の方が、より美しくなってしまったようだ。
 
 


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