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年1回の健康診断(2)

 
 まだ出てこない。
 後から入った人たちが、採尿用のコップを片手に、次々と出てくる。
 今回は、付き添いがいるから心配はないと思っても、不安が大きく膨らんでくる。
 待つことしばし、やっと出てきた。
 ケアマネージャーが、困った顔をしている。
 採尿が出来ないのだという。
 その代わり、大きいほうの"お漏らし"があり、処理に時間を要していたようだ。
 いっぱいの紙オムツを、車に常備していると告げる。
 ケアマネージャーの顔に、ホッとした様子がうかがえた。
 すぐさま、持ってきた。
 再度、トイレに消えた。

 時間だけは過ぎていくが、様子が分っているから、もう不安感は湧かない。
 たっぷりの時間が過ぎたころ、また困った顔をして出てきた。
 やはり、採尿が出来ないという。

 ふと、理由がひらめいた。
 受診を予約する時に、受付けの職員から、受診の3時間前に食事を済ませるように指示があった。
 いつもの薬を飲むのが目的だそうで、食事の量は通常の半分位とも付け加えた。
 血圧の薬など、日常の状況で受診して欲しいからだそうだ。
 指示に従い、まだ薄暗い早朝に食事を済ませた。
 その後、水分は採っていない。
 その間に、紙おむつを取り替えた。
 不要な水分は、すでに排泄されてしまったのだろう。
 出ないはずである。

 次の胸部レントゲンは、スムーズに終わった。
 心電図も、問題なく済んだ。
 これで、すべて終わりである。
 ケアマネージャーが、採尿に再チャレンジするという。
 使命感に燃えたケアマネージャーと共に、再度、姿を消す。
 今度も、なかなか出てこない。

 結局、出来なかった。
 受付けに、採尿を中止した旨を告げ、終了とした。
 すべて終わったと確認したのか、急に元気な母に豹変する。
 今までの"羊"が、饒舌に変貌する。
 待合室にいる患者たちに言葉をかけ、握手すら求めている。
 返事を返してくれる人たちは、すべて友人となった。
「お世話になりました」
「さようなら」
「ありがとう」 
 病人のようだった足取りも、軽やかに変わり、出口に向かう。
 申し訳そうな雰囲気の中、ホッとした表情を垣間見せるケアマネージャーにお礼をいい、別れる。

 30分ほどの遅れは出たが、デイサービスに向かう。
 今日は1日おきの入浴日ではないが、お漏らしがあったから、入浴をお願いしよう。
 
 


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