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2009年12月

何年かぶりの風邪?(2)

 
 連れてきてくれた2人から端的に様子を聞いたが、要は、"風邪だったら来ないでくれ"ということらしい。
 "本当に困ったら助けてくれないよ"との友人の言葉が浮かぶ。
 他の入所者にうつったら困るから、やむを得ないだろう。
 挨拶もそこそこに、職員たちは帰って行った。

 当初は弱々しい様子だったが、1人で居間に向かっている。
 いつもとは違うものの、ちゃんと歩いている。
 追いかけるが、すでに居間に至る。
 おやつを見つけるや否や、食べ始める。
 制止をして、パジャマに着替えの手伝いをする。

 今では、1人での着替えは、夢のまた夢となった。
 でも、1つ1つ指示を出すと着替えはできる。
 裏返しは少ないものの、前後逆が定番である。
 服の前後は分るようなのだが、前をこちらに向けて着るから、前が背中の方になってしまう。
 見ていないと、やり直しになってしまうので、最後まで付き添うことになる。
 風邪をひいた様子は、感じられない。
 熱もなさそうだ。
 咳もしていない。
 いつもの様子と変わらない雰囲気である。

 着替えも終わり、居間に戻らせる。
 昼食を2、3口しか食べなかったと聞いているから、お腹は空いているだろう。
 夕食の支度は、できている。  
 味噌汁も、まだ冷めきっていないから、すぐに温まった。
 食事を始める。
 ちょっと注意をしていない間に、口いっぱいになっている。
 いつものシチュエーションであることに気付く。

「残すよ」
「いいよ」
「残していい」
「いいよ」
 口いっぱいになると、繰り返される言葉である。
 相手の行動は、手に取るように分かる。
 いっぱいに食べ物を含んでしまっているから、次の食べ物が口の中に入らないだけなのだ。
 こちらの食べるスピードを落として、ゆっくり食べる。
 まもなく、口に入っていたものが、飲み込まれたようだ、
 口の中が無くなると、また食べ始めた。
 また口いっぱいになると、同じ言葉が発せられる。
「残すよ」

 同じことが、数度となく繰り返される。
 やがて、食卓に並べられたおかずは、すっかりなくなった。

 後片付けと、翌朝の準備をしていると、今日の大事件の当事者は、すでに寝室に消えていた。

 まずは、大丈夫のようだ。
 でも、明日は日曜日、医者も休日休診である。
 無事を祈って、1日が終わった。
 
 

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何年かぶりの風邪?

 
 午後3時ちょっと前、電話が鳴る。
 介護センターからだ。
 受話器を取ると、聞きなれた声が聞こえる。
 半年くらいで担当者が代わるものの、今の人はそれに近い長さなので、声を聞けば分る。
 いつもより、深刻な声だ。

 来所時の体温が37℃8分だったため、横にさせたそうだ。
 昼食も2、3口しか食べず元気がないし、歩くときに膝折れもするので、風邪と判断したようである。
 はっきりは言わないが、早めに引き取って欲しい雰囲気だ。

 土曜日だけ、帰りは施設の車で送ってもらっている。
 迎えの運転をしなくても良いので、昼間から酒を楽しめる日である。
 先ほどまで、先輩たちに誘われ、イッパイやっていた。
 迎えに行けない由を告げると、いつもより10分ほど遅くなるが、送ってくれるという。
 風邪が他の同乗人にうつると困るので、専用車を出すともいう。
 いつもの待ち合わせ場所で待っていればよいのかと聞くと、部屋まで送ってくれるという。
 何か大変な事態になったようだ。

 今朝、出かけるときに、異常は感じなかった。
 日々とは言わないまでも、着実に夢の世界に埋没しているのを、感じる時の方が多くなっている。
 これで転倒でもして骨折しようものなら、寝たきりで身体と精神ともに完璧な要介護5になってしまう。
 一番の恐怖である。

 北風の吹く季節、外で待つのもつらいが、事態が良く分らず、自宅でじっと待つのも、結構つらいものである。
 1分が長く感じる。
 チャイムが鳴る。
 約束時刻には、まだ早い。
 インターホンを通じて、だれかと訪ねる。
 介護センターだという。
 早く着いたのだ。
 玄関のドアを開ける。

 何と、2人の職員を従えての"お帰り"だ。
 それも、馬車ならぬ"車いす"での帰宅である。
 2人とも、いつもの明るい顔ではなく、深刻な顔をしている。
 "主人公"も、2人に合わせて深刻な顔をしている。

 こちらが驚く番である。
 主人公は、2人の介助を受けながら、車いすから降りる。
 朝とは様変わりで、弱々しい。
 この時刻では、病院の診療は終わっている。
 明日は日曜日で、どの病院も休診だろう。
 こちらに引き取ると同度に、緊急の事態に備えるため、無理やり車いすを借りる。
 最悪の事態が頭をよぎる。
 いずれ訪れるであろうと覚悟はしているが、予兆もなくやって来るとは思わなかった。
 
 

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大雪が想いの中で舞う

 
 ベランダから、陽の光が差し込む。
 母には直接当たらないものの、ベランダ近くの位置に平行に座っているこちらには眩しい。
 レースのカーテンを引く。
 昨日までは曇りだったが、今日は天気が良い。
 天気予報によると、しばらく北風が続き、気温は例年より低いままだそうだ。
「天気が良いねー」
 陽が射し込むのを見たためか、元気な声を出した。
 だれに話しかけるのでもなく、独り言のような声が続く。
「昨日は雪だったのに、融けてしまったようだね」

 テレビは、ほとんどが見ているのか見ていないのかうかがい知れない状態なのだが、時おり関心を持つ。
 昨夜の夕食の時、しきりに放映していた。
 12月としては、記録的な降雪なのだそうだ。
 豪雪のニュースには、興味津々のようで、
「大雪だよ」
「あした、雪片しをしなきゃならないよ」
「すごいねー」
「大変だねー」

と、しきりに感心していた。
 珍しく、食事に支障をきたすほどだった。
 結局、積雪のシーンが終わるまで見ていた。

 2人の叔母と電話で話したが、久しぶりの大雪だという。
 離れて住む者にとっては、雪は限りなく美しいが、住む者にとっては戦いである。
 いつ果てるともなく、深々と降り注ぐ雪。
 夜明けとともに、雪を片して、歩ける程の道を確保する。
 昔は、家の前も除雪を担当する範囲だった。
 今では、夜明けと共に、役所が手配している業者が、大きな除雪機で、いっきに片づけてしまう。
 便利な世の中になったものだが、雪国での予算もバカにならないと聞く。

 1晩たっても覚えているとは、よほど印象に残ったのだろう。
 雪国生れで、雪国で育ち、後期高齢者になるまで雪国で人生を歩んできたのだから、当然なのかもしれない。
「寒いねー」
「大雪だから、仕方ないね」

 まだ降っていると言っている。
 "おいおい、今の住まいでは、雪など降っていないよ"、と言いところだが、詮無いこととあきらめる。

 やがて、頭の中の"雪"は、すっかり消えた。
 そして、これから出かける"老人会"で埋め尽くされた。
 
 

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紙オムツが消えた

 
 朝がやってきた。
 代り映えのしない1日の始まりである。
 いつもの着替え始まる。
 今日も、背中までびっしょり濡れていた。
 
 着換えを手伝っていると、何か違和感がある
 使用済みの紙オムツが消えている。
 昨夜、寝る前に交換したはずだ。
 探したが、見つからない。
 トイレは"卒業"したようだから、最近は訪ねようとはしない。
 一応、トイレの中を覗いたが、当然、ない。

 寝室は、シンプルになっている。
 お泊りの"老人会"専用の手提げ袋、帽子、ハンドバックを収めた小さな棚が、1つ隅にある。
 その脇に、柔らか目のプラスチック製容れ物がある。
 下着類を入れており、半透明だから透けて見える。
 こちらが必要に応じ出し入れするようになって、自らが使用するための出し入れは無くなっている。
 残りは、見向きもされなくなった鏡台があるだけである。
 入口にハンガー掛けが置いてあり、必要な着替えやパジャマがかけてある。
 押入れにも興味を失ったから、悲惨な散乱は無くなった。

 隠すところがないのである。
 意味がないとは思ったが、本人に聞いてみた。
「知らないよ」
 予想された回答で、一蹴された。

 一応、押入れも含め、トイレ、風呂場まで探してみた。
 ベランダから、投げ捨てるなど失礼なことはしたことがない。
 ベランダへのガラスドアのカギは、開けていない。
 
 見つからないのである。
 消え失せた。
 隠す場所などない狭い住まいなのに、忽然と消えた。

 記憶違いだろうか。
 昨夜のことを、思い浮かべる。
 やはり、交換した。
 真夜中に、ハイキングに出かけたのだろうか。
 熟睡していて、気付かなかったこともありうるが、ドアチェーンが操作された様子はない。

 過去の悩みの1つに、トイレの詰まりがあった。
 紙オムツを無理やり押し込まれたため、流そうとするから水が溢れる事件は、1度や2度ではなかった。
 介護生活に入ろうと決意した、きっかけの1つでもあった。
 再び確認したが、詰まってはいなかった。

 余計な時間が、どんどん過ぎていく。
 不思議の感が拭えない。
 "お漏らし"したため交換した下着を、洗濯機に入れる。
 昨夜、デイサービスで着替えた下着と衣類を入れておいたが、その時と何かが違う。
 夜中に着替えたのか。
 今着ているものは、昨夜に着たものである。
 使用された様子は無かった。

 中を覗いて、良く見てみる。
 あった。
 元々、清潔好きだったから、紙オムツも洗濯するつもりだったのだろうか。
 危うく、洗濯機を回し、ひどいことになるところであった。

 新たな"探し物ゲーム"は、終わった。
 そして、代り映えのしない日に戻った。

 代り映えしない日が、一番だと思った。
 太陽の陽が、ベランダから、さんさんと差し込んできた。
 
 

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年1回の健康診断(2)

 
 まだ出てこない。
 後から入った人たちが、採尿用のコップを片手に、次々と出てくる。
 今回は、付き添いがいるから心配はないと思っても、不安が大きく膨らんでくる。
 待つことしばし、やっと出てきた。
 ケアマネージャーが、困った顔をしている。
 採尿が出来ないのだという。
 その代わり、大きいほうの"お漏らし"があり、処理に時間を要していたようだ。
 いっぱいの紙オムツを、車に常備していると告げる。
 ケアマネージャーの顔に、ホッとした様子がうかがえた。
 すぐさま、持ってきた。
 再度、トイレに消えた。

 時間だけは過ぎていくが、様子が分っているから、もう不安感は湧かない。
 たっぷりの時間が過ぎたころ、また困った顔をして出てきた。
 やはり、採尿が出来ないという。

 ふと、理由がひらめいた。
 受診を予約する時に、受付けの職員から、受診の3時間前に食事を済ませるように指示があった。
 いつもの薬を飲むのが目的だそうで、食事の量は通常の半分位とも付け加えた。
 血圧の薬など、日常の状況で受診して欲しいからだそうだ。
 指示に従い、まだ薄暗い早朝に食事を済ませた。
 その後、水分は採っていない。
 その間に、紙おむつを取り替えた。
 不要な水分は、すでに排泄されてしまったのだろう。
 出ないはずである。

 次の胸部レントゲンは、スムーズに終わった。
 心電図も、問題なく済んだ。
 これで、すべて終わりである。
 ケアマネージャーが、採尿に再チャレンジするという。
 使命感に燃えたケアマネージャーと共に、再度、姿を消す。
 今度も、なかなか出てこない。

 結局、出来なかった。
 受付けに、採尿を中止した旨を告げ、終了とした。
 すべて終わったと確認したのか、急に元気な母に豹変する。
 今までの"羊"が、饒舌に変貌する。
 待合室にいる患者たちに言葉をかけ、握手すら求めている。
 返事を返してくれる人たちは、すべて友人となった。
「お世話になりました」
「さようなら」
「ありがとう」 
 病人のようだった足取りも、軽やかに変わり、出口に向かう。
 申し訳そうな雰囲気の中、ホッとした表情を垣間見せるケアマネージャーにお礼をいい、別れる。

 30分ほどの遅れは出たが、デイサービスに向かう。
 今日は1日おきの入浴日ではないが、お漏らしがあったから、入浴をお願いしよう。
 
 

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年1回の健康診断

 
 健康診断の日が、やってきた。
 老人を対象とした、年1回の無料の検診である。
 2つの病院にかかっているので、必要がないのかも知れないが、いずれも田舎である。
 何かがあった時の用心も兼ねて、今の住まい近くの病院でも、毎年、受診している。

 少し前に受診したような気もするが、1年が経っている。
 時の経つのが、毎年、早くなる。
 早くても、この1年の状況も、大きく変わった。
 昨年は、散歩がてら、歩いて行った。
 "秋の終わり"と、"冬の訪れ"を、眺めながらである。
 病院は、住まいの公園の、東はずれにある。
 距離にして、400メートルもない。
 散歩するにも、短すぎる距離なのであった。
 当時は、夜のハイキングも活発で、何の問題もなかった。

 今年は気温も低かったし、体力もおぼつかないので車にした。
 あっという間に、着く。
 昨年と違う点が、もう1点ある。
 ケアマネージャーに、付き添い人を頼んでおいた。
 身長、体重、問診、血液検査、胸部レントゲン、心電図などは問題ないのだが、尿検査に問題があるのである。
 1人での採尿は、もう無理なのである。
 すでに、トイレは"卒業"している。
 一般の病院だし、無料の検診だし、病院の関係者に補助を頼むことも、無理だろう。
 昨年も、1人では怪しくなっていたが、かろうじて採れた。
 手助けをしてもらうことは、頼んでもしてくれなかった。
 こちらが、女子トイレに入ることもできまい。
 かといって、男子トイレに入るのは、まだ本人の抵抗がある。

 病院の前で、待ち合わせた。
 なんと、ケアマネージャー本人が、ニコニコしながら待っていた。

 受付けを済ませる。
 肝炎の検査を受けるかと、聞かれた。
 なんでも、今まで1度も受診していない者は受けるようにと、行政の指導があるのだという。
 採血した検査の際に、チェック項目を追加するだけだから、検査の種類が増えるのではないという。
 それならと、申し込む。

 診断が始まる。
 まず、問診の所へ行くように、指示される。
 長い長い廊下を進み、目的地に着く。
 医師による問診、肺と心臓への聴診、血圧の測定などが行われ、終了と同時に看護師による体重と身長が測られる。
 寸分の狂いもなく、手際良い。

 次は、血液の検査だという。
 先ほど通ってきた廊下を、半分ほど戻る。
 受付けに、"札"を渡す。
 こちらも、数分と待たずに、声がかかる。
 流れ作業のように、完璧な動作で、あっという間に採血は終了する。

 いよいよ、問題の採尿である。
 ケアマネージャーの出番だ。
 2人が、女子トイレに消える。

 大きな病院であるから、廊下の両脇や、仕切られていない待合室には、人が溢れている。
 あちこちに、数多くの長いすが、所狭しと設置されている。
 次から次へと診察室に消えるものの、イスが空くことはない。
 新型インフルエンザの大流行の兆しがあると、マスコミが騒いでいるから、防御のためにマスクをさせて連れてきた。
 テレビでいう割には、病院内で咳をしている人はいない。
 夏ごろには、風邪にかかったと思ったら、来院しないで電話をして指示を仰ぐようにと、テレビで放映していた。
 その後は、通常に戻ったと解釈していたが、今でも続いているのだろうか。
 予想が外れたというより、意外な感じがした。

 2人が消えて、ずいぶん経った、
 ちょっと長過ぎる。
 
 

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お泊りの老人会は好かない

 
 久しぶりのショートステイの終了時刻が迫ってきた。
 迎えに向かう。
 5階のフロアーだけが、ショートステイを引き受ける場所で、それ以外の階は、特別老人ホームである。
 休みの日には、1階の受付けも休みだ。
 今までは、交代で止むなく出勤している風の職員が1人、暇そうにしているだけなのだが、今日は5、6人がいる。
 大勢いたとしても、受付けや案内のところには座っていない。
 何か行事でもあるのだろう。
 パソコンを覗いていて、こちらを気づかう様子もない。

 挨拶はするものの、ただそれだけである。
 平日は、ここで利用料の支払いをするのであるが、休みは5階の係員と、直接、清算をする。
 人が大勢いても、支払いは5階のようだ。
 エレベーターのボタンを押す。
 しばらくすると、ドアが開く。
 乗り込む。

 1度、間違って途中の階のボタンを押したことがある。
 エレベーターが開き、初めて施設内を見てしまったが、雰囲気は心地良いものではなかった。
 いずれはお世話になることになろうが、できるだけ手元で介護しようと、強く決心させるに十分なインパクトがあった。
 間違いないように注意をして、5階のボタンを押す。

 ゆっくりと上昇し、程なく到着する。
 係り員たちが、忙しそうに老人たちの世話に追われている。
 こちらを発見したらしく、ニコニコ顔に変わった。
 職員たちも、気付く。
「○○さん、迎えが来て良かったね」
 答えるより先に、近づいてくる。
 よほど帰りたかったようだ。

 係員の制止を受け、帰り支度をしている間に、清算に入る。
 何かあったかとの問いに、状況を説明してくれる。
 前回の時より、やはり症状が進行しているのを実感する。
 床ずれが出来ているとのことは、意外だった。
 寝たきりでもないし、"真夜中の活動"が激減したわけでもなく、動けることには変わりはないはずだ。
 眠ってしまうと、一晩中、動かないのだろうか。
 ガーゼ付きテープを貼ってくれたとのことである。

 清算も終わり、話しも聞き終わり、引き取る。
「お世話になりました」
「ありがとね」
「さようなら」
 元気いっぱいの声で、お別れのあいさつを発している。
 職員だけでなく、入所している人にも、忘れていない。
 職員の
「また来てね」
「待ってますよー」
の言葉だけには、まったく返事をしない。

 すたすたと、元気よく、エレベーターに向う。
 1人で歩くのが厳しくなったと言っていた職員が、びっくりした顔でお別れをした。
 やはり、"お泊りの老人会"は、好きにはなれないようだ。
 
 

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