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紙オムツが消えた

 
 朝がやってきた。
 代り映えのしない1日の始まりである。
 いつもの着替え始まる。
 今日も、背中までびっしょり濡れていた。
 
 着換えを手伝っていると、何か違和感がある
 使用済みの紙オムツが消えている。
 昨夜、寝る前に交換したはずだ。
 探したが、見つからない。
 トイレは"卒業"したようだから、最近は訪ねようとはしない。
 一応、トイレの中を覗いたが、当然、ない。

 寝室は、シンプルになっている。
 お泊りの"老人会"専用の手提げ袋、帽子、ハンドバックを収めた小さな棚が、1つ隅にある。
 その脇に、柔らか目のプラスチック製容れ物がある。
 下着類を入れており、半透明だから透けて見える。
 こちらが必要に応じ出し入れするようになって、自らが使用するための出し入れは無くなっている。
 残りは、見向きもされなくなった鏡台があるだけである。
 入口にハンガー掛けが置いてあり、必要な着替えやパジャマがかけてある。
 押入れにも興味を失ったから、悲惨な散乱は無くなった。

 隠すところがないのである。
 意味がないとは思ったが、本人に聞いてみた。
「知らないよ」
 予想された回答で、一蹴された。

 一応、押入れも含め、トイレ、風呂場まで探してみた。
 ベランダから、投げ捨てるなど失礼なことはしたことがない。
 ベランダへのガラスドアのカギは、開けていない。
 
 見つからないのである。
 消え失せた。
 隠す場所などない狭い住まいなのに、忽然と消えた。

 記憶違いだろうか。
 昨夜のことを、思い浮かべる。
 やはり、交換した。
 真夜中に、ハイキングに出かけたのだろうか。
 熟睡していて、気付かなかったこともありうるが、ドアチェーンが操作された様子はない。

 過去の悩みの1つに、トイレの詰まりがあった。
 紙オムツを無理やり押し込まれたため、流そうとするから水が溢れる事件は、1度や2度ではなかった。
 介護生活に入ろうと決意した、きっかけの1つでもあった。
 再び確認したが、詰まってはいなかった。

 余計な時間が、どんどん過ぎていく。
 不思議の感が拭えない。
 "お漏らし"したため交換した下着を、洗濯機に入れる。
 昨夜、デイサービスで着替えた下着と衣類を入れておいたが、その時と何かが違う。
 夜中に着替えたのか。
 今着ているものは、昨夜に着たものである。
 使用された様子は無かった。

 中を覗いて、良く見てみる。
 あった。
 元々、清潔好きだったから、紙オムツも洗濯するつもりだったのだろうか。
 危うく、洗濯機を回し、ひどいことになるところであった。

 新たな"探し物ゲーム"は、終わった。
 そして、代り映えのしない日に戻った。

 代り映えしない日が、一番だと思った。
 太陽の陽が、ベランダから、さんさんと差し込んできた。
 
 


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