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要介護5になって初めてのお泊り

 
 帰宅すると、留守電を知らせるLEDが点滅している。
 ほとんどの伝言は、売り込みか何かで、こちらにとっては用のないものである。
 再生して聞いたことのない声だったら、マンションがどうの、健康に良い食品があるとか、投機で財産を増やしませんかとか、保険がどうの、などなど聞きあきた内容が多い。
 困るのは、ほんのわずかではあるが、"とても重要"な伝言が入っている場合があるからである。
 "とても重要"なことといっても、おめでたい話は少ない。
 通常の要件ならば、こちらが在宅してくるころを狙って、電話をかけてくる。
 そのころ合いから外れた伝言は、当然、予想をしていない出来事を伝える内容となる。
 聞きなれた声だったら、まず不幸を知らせる伝言だ。

 再生をする。
 親戚や縁者ではないようだが、聞き覚えのある声である。
 定形の挨拶が、まず聞こえる。
 次いで、本題に入る。
「ショートステイの利用料金の計算を間違えました。金額は○○○円です」
 そういえば、要介護5に変わったのに、入所の際に渡された請求書の金額は、今までと同じような数字だったのを思い出した。
 要介護5になってから、初めてのショートステイである。
 入所者の相手をしている職員たちは、忙しい。
 その職員たちが計算するのだから、間違いもあろう。

 ショートステイの抽選に当たって、いま入所している。
 今回、送り届ける際、そんなに抵抗はされなかった。
 "お泊りの老人会"は、今でも行きたくない様子が、ひしひしと伝わってくるのだが、
「出張で家にいないから、食事はどうする?」
「老人会に、1人で行くの?」
の論旨で押し切って、連れて行った。
 相変わらず、元気のない、しぶしぶの入所であった。
 今回も、後ろ髪を引かれながら、施設を後にした。

 迎えに行く日がやってきた。
 指定の時刻に着くように、家を出る。
 一段と寒くなっている。
 車で迎えに行くといっても、エンジンが温まる距離ではない。
 とても、車内が暖まる時間はかからない。
 少し早めに家を出て、今どき進化した車には必要もない暖気運転を、数分、駐車場で行った。
 車内が、暖かくなってきた。
 サイドブレーキを下し、迎えに出発した。

 土曜日は、1階にある事務所は休みである。
 平日はここで支払いを済ますのだが、土日は介護をしている職員が行う。
 休みのはずなのに、今日も机に向かって数人がいた。
 前回から、数人が出勤している。
 何のための出勤かは分らないが、支払いを受け付けようとする雰囲気は、全く感じられない。
 挨拶も省略なのは、お役人のお役人たる所以であろう。
 エレベーターに乗り込み、5階に向かう。
 2階から4階までは特別老人介護の施設であるから、途中から人が乗ってきたことはない。
 今日も直通で向かっており、程なく到着した。

 ドアが開くと、耳慣れない嬌声が聞こえる。
 元気の良いお年寄りが、入所しているようだ。
 係員に声をかける。
 いつもなら、その声を聞き分け、にこやかな顔を見せるのだが、こちらを見ようともしない。
 要介護5、息子の顔も見忘れたのか、ちょっと心配である。

 職員に促され、帰宅できると認識したようだ。
 にこやかな顔を向ける。
 いつもの顔に戻った。
 大好きな果物も、いっぱい準備してある。
 さあ、帰ろう。
 
 


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