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大きなタンコブ

 
 迎えに行く。
「息子さんが、お迎えに来ましたよー」
 伝言ゲームのように、迎えに来たことが伝わっていく。
 しばらくすると、バタバタと聞きなれた足音が近づいてくる。
「さようなら」
「お世話になりました」
「またねー」
・・・・・・・・・・・

 毎日、繰り返されている挨拶も、徐々に大きくなってくる。
 喜々とした声だ。
 大好きな"老人会"なのだが、迎えに行くと喜んでくれる。
 心の救いである。

 ひたいに、真っ白い網目のゴムバンドをしている。
 テニスの選手のようだ。
 なかなか似合っている。
 問う前に、職員が長々と言い訳をはじめる。

 要は、1時間ほど前に、イスに座ろうとした際、浅く座ったために、すべって転げた。
 その時、イスの角に後頭部を打ったとのことである。
 タンコブが出来たため、湿布を固定するためのバンドだった。
 後頭部に触ってみる。
 予想以上の、大きさのタンコブが出来ていた。
 転倒することはあっても、こんな大きなタンコブができた作った記憶はない。
「痛くないの?」
「痛くない」
 型どおりの挨拶をして、母を引き取る。
 申し訳ないというより、ホッとした顔の職員をあとにする。

 車に乗り込んでから、再度、聞いてみる。
「痛い?」
「痛くない」
 痛がってはいないようだ。
 一安心と思うが、最近は"痛い・痛くない"も怪しくなっている。

 寝たら最後、1晩中、寝返りも打たず、そのままの状態で過ごすようで、床ずれが出来た。
 出血しているから痛いはずなのに、
「痛くない」
という。
 田舎の医師にかかっているため、すぐに診てもらえない。
 やむなく、都会での初受診だった。
 軟膏を塗ってガーゼを当てる作業が、朝食前の日課の1つに加わっている。
 "治ったかと思えば、また再発"を繰り返しているが、
「痛い」
とは、1度も言ったことがない。

 今晩は、様子に注意する必要がありそうだ。
 
 


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