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ドライブの日が再開された

 
 久しぶりに、"ドライブの日"の復活である。
 一応、朝食の時に聞いてみた。
「どこかに行く?」
「行く」

 毎日、デイサービスの送迎の際にも車に乗るものの、たかだか数分の乗車である。
 とても、ドライブとは言えまい。
 長距離ドライブは、昨年11月の診療のための帰省以来である。
 冬場の薬は、3月中旬までの分をもらっているが、記録的な降雪なので、その時までに融けるか心配している。
 最後の"ドライブの日"は、それよりも随分前だった。

 紙オムツは、充分過ぎるほど積んである。
 最悪のための着替えも、搭載済みだ。
 
 車に乗って、"ドライブの日"の儀式を行う。
「どこに行く?」
「どこでもいい」
「海、山?」
「海」
「太平洋、日本海?」
「日本海」
 以前と変わらない、出発前の会話が交わされた。

 デイサービスに向かうときは、裏路地を数百メートル走るだけで、大通りは通らない。
 久しぶりに大通りを走る。
「もうすぐ、葉でいっぱいになるね」
 しばし、何のことか分らなかった。
 繰り返している。
 何のことなのか、真剣に思い巡らす。
 道路沿いに植えられている街路樹のことのようだ。
 剪定されていて1枚の葉も付けていないが、幹はメタボのように太くたくましい。
 枝切りされた枝も、筋骨隆々のマッチョのようで立派である。
 寒空に寒々と立ちすくむ、日本古来の樹木とは違う。
 車の中は少し暑めだから、春を感じとったようだ。

 しばらくすると、
「天気が良いね」
という。 
 見事な曇り空である。
 おまけに、時おり霧雨が降ってくる。
「天気が良いね」
 何度も繰り返す。
「霧雨が降っているよ」
 問いかけへの答えは、返らない。
 じっと、前方を見据えている。
 きっと、心が和やかな日は、晴天のように感じるのだろう。

 久しぶりのドライブだから、今の様子は分らない。
 コンビニのトイレを借りる段階は過ぎてしまい、迷惑のかからない"だれでもトイレ"が必要だから、一番近い海岸にした。
 1時間ちょっとで着いた。
 寒空で、かつ霧雨も降っている天気である。
 海に出かける物好きは、いないようだ。
 駐車場には、1台の車もない。
 遠くまで広がる砂浜にも、人影は見当たらない。
 気温は低そうだ。
 窓を開ける勇気はない。
 ラジオを消す。
 打ち寄せる波の音が、かすかに聞こえてくる。
 風は吹いていて、飛ばされた砂が、砂浜の上を舞っている。
 まだ、昼食には早い。
 コンビニで買ってきたお菓子を、車中で広げる。
 果てるともなく打ち寄せる波の姿を、眺めている。

 人々が遊んでいると、動きに合わせた声を発するのだが、相手がいないので無言で眺めている。
 車中が暖か過ぎるためか、睡魔が襲う。
 シートを倒し、うたた寝する。

 目が覚める。
 30分弱が過ぎていた。
 助手席も、"お休み"していた。
 誰もいない海岸に、飽きたようだ。
 今度は逆に、こちらが打ち寄せる波を眺めていることにした。
 まもなく、助手席も目覚めた。
 ペットボトルのお茶を、うまそうに飲み始めた。

 次の海岸に向かう。
 実に道路も空いている。
 あちこちに、海鮮を売り物にした食堂もあるのだが、"お漏らし"が常では入れない。
 コンビニで、こぼしても大丈夫なオカズの入った弁当を求める。
 目的の海岸に着く。
 こちらの広い駐車場にも、車の姿は無い。
 車中で弁当を広げる。
「美味しいね」
 上機嫌である。
 再開して、良かった。

 人のいない海岸は、面白そうではないようだ。
 時間も充分あるので、帰路は一般道を通ることにした。
 3、4か所の渋滞には見舞われたが、1か所を除けば、通常のひどさではなかった。
 予想した時間より、はるかに短い時間で帰宅できた。
 久しぶりの"ドライブの日"は、無事に終了した。
 
 


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