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ドライブの記憶が消えた

 
 3日前に"ドライブの日"が、久しぶりに復活した。
「今日は天気が良いね」
 時々つぶやくが、実際の晴天を指していたのではなく、心が弾んでいる時だと、この最中に判明した。
 霧雨が降っていたにも関わらず、同じ言葉が、何度も繰り返されたからである。
 今朝は、間違いなく晴天である。
「今日は天気が良いね」
が、ピッタシの天候である。
 "ドライブの日"にも、絶好だ。

 いつもの会話を交わす。
「どこかに行きたい?」
「行きたい」
「どこに行く?」
「どこでもいい」
「海、山?」
「海」
「太平洋、日本海?」
「日本海」

 前回は久しぶりたったので、どの位のドライブ時間に耐えられるか分らなかった。
 まず1時間ちょっとで行ける、最も近い砂浜に向かった。
 今日は、倍近い距離のところを選んだ。
 昔と比べて長くなった着替え時間を経て、出発した。

 時おり、何かをつぶやいているが、高速走行の音にかき消され、良く聞き取れない。
 話しかけている様子ではない。
 聞き流し、一目散に目的地に向かう。
 車の数は前回の時よりも多いが、渋滞の気配はない。
 リズミカルなエンジン音の中、陽の光がさんさんと降り注ぐ。

 何かが、昔と違っている。
 つぶやいている声が小さいのか。
 違う。
 目に飛び込んでいる文字を読まなくなったのか。
 何やら、つぶやいているから、こちらは良く分からない。

 そうだ。
 "カーナビ麗人"と会話をしていないのだ。
 今までは、カーナビが発する"音"に相対応していた。
 久しぶりだったので、"知り合い"ではないと思ったのか。
 それとも、人ではないと理解したのだろうか。
 前回も、相対応していなかった。
 聞こうとも思ったが、なすがままにした。
 間違っていることだし、強要することでもないだろう。

 "海"に着いた。
 前回は外海だったので波が荒かったが、今日は湾の内側なので穏やかである。
 ずいぶん前から、波が穏やかだと"太平洋"、大波だと"日本海"と、なぜか呼んでいる。
「今日の日本海は、穏やかだねー」
 "日本海"と"太平洋"が入れ換わっている。
 象徴的に言っていることだから、その時の気分で良かろう。

 例年よりも、気温が低いという。
 それでも、釣り人たちなどが、あちこちに見受けられる。
 海水浴シーズンでなければ、砂浜で釣りをしても良いようだ。
 しばし、眺める。
 お菓子も、楽しむ。
 投げ釣りの仕草や、人が戯れるのを、楽しそうに見ている。
 今日は、しばらく大丈夫のようだ。
 シートを倒して、うたた寝する。

 視線を感じて、目を開ける。
 シートを戻す。
 こちらを向き、何度も見ている。
 何かを言いたいようでもない。
「何?」
「大きな観音様がある」
 なるほど、海に向けて止めた車の右の方角に、観音様がこちらを向いているのが見えている。
 目的があるわけでないので、観音様に寄っていくことにした。
 観音様にご挨拶をして、次の海岸で3分の1をこぼしながらの昼食も終え、途中の走行中に両手をベタベタにしながらのアイスクリームも楽しみ、ひと噛みしかしないミカンも味わいながら、帰路につく。

 夕食も、食べ終えた。
 明日の下ごしらえも、済ませた。
 団らんに、入る。
「何が一番面白かった?」
「ボール投げ」
「ボール投げ?」
「今日、老人会でやったよ」
「今日は、どこに行った?」
「老人会」

 今日の"ドライブの日"は、すべて消えていた。
 
 


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