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さらに"進化"した

 
 声をかけ、ふすまを開ける。
 やはり、布団をはだけて寝ている。
 あぶない経験をしたので、居間にあるエアコンから温風が入る様に、ふすまを少し開けてある。
 取り敢えずの、凍死の防止策である。
 室温を暖めていても、掛け布団なしのパジャマ姿で寝たら、冬場の今の時期は、やはり危険である。
 目が覚めるたびに、見に行くようにしているが、ほとんどがずれている。
 寒さを感じることは、すでに失っているようだ。

 介護生活に入る前のことを、思い出す。
 真夜中を過ぎると、1、2分ごとに入口のドアを叩く。
 叩くと、すぐに撤退する。
 数時間、疲れ切るまで、繰り返される。
 注意しても理解していないのだから、止めることは出来ない。
 耐えるしか、仕方がなかった。
 想像を超える辛さだった。

 体力の低下に伴って、夜のハイキングは減った。
 こちらの部屋の攻撃も、ずいぶん前に消滅した。
 ホッとするのも束の間、別の意味で、毎夜が戦場になった。
 "お漏らし"による体温低下も、重要なチェック項目となった。
 悩みは、尽きぬものだ。

 昨日まで、2、3割はこぼすものの、箸を上手に使って食べていた。
 一口サイズにしてあるが、それでもチョット大きい物は素手でつかんで食べるのは、ご愛嬌である。
 麺類は、食卓から消えて、久しい。
 すすることが出来なくなっているからである。
 デイサービスでも麺類を残すと聞いた時、家での状態を告げたら、母のメニューから消えたそうだ。

 今日の食事の仕草は、明らかに異常だ。
 箸で掴むものの、7、8割がこぼれる。
 ちょっと目を離したすきに、リスの頬の様に、はち切れんばかりに膨らんでいる。
 食べ物でいっぱいになった口に、味噌汁を注ぎ込もうとするが、入るはずもなく、ほとんどがこぼれる。
 それでも、次のものを押し込もうとする。
 注意しても、目がうつろだ。
 理解はもとより、聞いている様子もない。

 テレビで映していたスプーンで食事の介助をしている姿が、頭いっぱいに広がった。
 
 


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